私情まき散らし日記SP

VOL.1 「ヤツとの再会」

 

さて、先日から予告し続けてきた、いわゆる「鎌倉ネタ」である。
この話は実は、その日だけの単発ネタではなく、数年前からの伏線のある話である。
したがって、先日の話をする前に、まずその話から始めなければならない。
長くなるとは思うが、まあ、読んで欲しい。

 

 

数年前、といってももう4年ほど前だろうか。
俺は1人の男に出会った。

 

 

 

場所は横浜駅の相鉄口前。
時刻は昼飯の時間もほど近い頃だった。

 

 

俺は東急ハンズに向かうために早足で歩いていた。
何を買おうとしていたのか、そもそもなぜハンズでなければならなかったか、などはもう忘れてしまった。
ヤツとの出会いによって、そんなことはもうどうでもよくなってしまったのだ。

 

 

ヤツは、人混みに囲まれていた。
何かの芸でもやっているようだった。
俺はふと、その人だかりが気になって、一番後ろからそっと覗いてみた。
それが、俺とヤツとの最初の出会いだった。

 

 

 

ヤツの名はジョニー
日本人ではないようだ。
どうやら名前からはアメリカ人のようだ。
また、彼の顔も、今まで見たことがないぐらい変わっていた。

 

これが彼の顔だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジョニーはなかなかおもしろいヤツだった。
見た目の通りだが、バカっぽかった。

 

 

 

人をバカにしたような笑顔が、なんともステキだ。

 

 

 

 

しかし、彼はその外見とは裏腹に、すごい能力を持っていた。
なんと、その貧弱な二次元ボディを、第三者の意思にあわせて、自由に動くことができるのだ。

 

 

 

ちなみに、彼の2次元ボディを表した、全身写真が存在する。
特別に、みなさんに見せてあげよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんともステキなボディだ。

 

 

 

 

 

人をバカにしたような笑顔にぴったりの、ナイスバディだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼の得意技は、なんの支えもなく、自由にジャンプしたり踊ったりすること。
俺はその光景に釘付けになった。

正確に表現すれば、あっけにとられていた。

 

 

俺は、ジョニーがどんな仕掛けで動いているのか、非常に気になった。
ジョニーを動かしていると思われる女性がいたが、ジョニーの上にかざされた彼女の手には、なんの仕掛けもないようだ。

女性は、ギャラリーのリクエストにあわせて、自由自在にジョニーを操っている。
ジョニーは、相変わらずギャラリーを小馬鹿にしたような笑顔で、動き続けている。

 

そのジョニーの動きを、分かりやすく表したのがこのアニメーションである。

 

 

女性の動きにあわせて、ジョニーははねたりとんだりしている。
俺は、ジョニーにいたく感動した。

 

 

 

これはおもしろい…

仕組みはわからんが、すげえよ、これ!

 

 

 

 

ジョニーは、俺のハートをがっちりゲットしやがった。
俺は夢中になって、飛び跳ねるジョニーを眺めていた。
いい年こいてな…。

 

 

 

そのうちに気がついた。
女性の足下には、袋に入ったジョニーがたくさん並んでいる。

 

みると1000円。

なんとジョニーは、売られていた。

 

 

 

一瞬ドナドナを思い出す。

 

 

 

 

♪あーるー晴れたー ひーるーさがり いーちーばーへ続ーく道ー♪
♪にーばーしゃーが ゴートーゴート こーうーしーを乗せてゆくー♪

 

 

 

 

 

ああ、ジョニーも売られているんだ…。
一体何があったんだろう…。

 

 

こんな、3歳児の工作よりもひどい出来のジョニーが売られてる…。

 

 

 

 

 

はっと気がつくと、俺の手はなんだか知らないが、財布を取り出そうとしていた。

 

 

 

危ないところだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はその場をあとにした。
これ以上ジョニーをみていると、なんだか発作的に買ってしまいそうな気がしたのだ。

こんなもんに1000円突っ込むのはばかげている…。
ダメだ俺、買っちゃダメなんだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後。

しかも朝。

 

 

 

 

 

父親が、俺を呼んでいる。

「おい…、ちょっと…」

 

 

 

 

俺は、なんだろうと思いながらも、父親のところへいった。

「なに?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

父親の手には、ビニール袋に入った、見覚えのある何かが握られていた。

「これ…」

父親は、苦笑いしながら俺に差し出す。

 

もう一度、俺はよく見た。

 

 

 

 

そして、確信した。

 

 

 

 

 

 

 

 

じょ、ジョニーだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

なんとまあ、こんな所で再会するとは…。
俺はもう、なんだかよく分からなくなっていた。

しかも、反射的に俺は声に出していた。

 

「えっ、かったの!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

苦笑いしながらうなずく父親。
おそらく俺も同じ顔で、あいまいに笑う。

 

 

 

 

 

 

しかし、俺は素直に驚きを声に出してしまった。

この声に機敏に反応したのがうちの母親だ。

 

「なに、なに、何買ったのっ!?」

 

足音が急速に近づいてくる。

 

 

 

 

 

 

ば、万事休す…。

 

 

そこで、父親は観念した。

出来れば、闇に葬り去ってしまいたかったろうに…

 

母親は、絶句している。

 

 

「な、何これ?」

 

 

 

 

父親は苦笑いをしている。

 

 

俺は、自分が買ったわけでもないのになぜか自慢げに

 

 

 

 

「これがジョニーだ!」

 

 

 

 

なんだか、妙にイタイ空気が我が家に流れる…。

 

父親は観念して、ことの顛末を語り出した。

それによると、どうやら父親も都内某所でジョニーを見かけたらしい。
そして、ジョニーの驚くべき動きにいたく感動したらしい。

 

この動きにな。

 

 

ここまでは俺と同じである。

違うのはここから。

 

父親は、迷っていた。
買うべきか、やめるべきか。

その時、一緒にみていたサラリーマンらしき人が、「1つ下さい」といって買っていったのだ。

 

 

恐ろしい…。

 

迷っているときに近くの人間が決断を下すと、それにつられてしまうのだ。

これはもう、しょうがないのだ。

 

そうして、うちの父親も買ってしまった。

2つなら1500円といわれたそうだが、さすがにそれは断ったようだ。

 

 

あ た り ま え だ 。

 

 

 

 

電車の中でも、気になってしかたのない父親。
家族の前で、ジョニーを動かす所を思い、ちょっとわくわくする。

そんな気分で、父親はジョニーの入った袋を開けた。

 

開けてしまった…。

 

 

その瞬間、父親は悟った。

これは、誰にも知られてはいけない…。

 

もう、デビルマンの世界である。

 

 

 

♪だーれも知らない 知られちゃいけーないー♪
♪デビルマンーがだーれーなのーかー♪

 

 

 

 

 

まさしく、デビルマン。

デビルジョニー

 

ジョニーは悪魔の破壊力を持っていた。

その破壊力の源は、バカ丸出しの顔ではなく、ジョニーの裏にあった。

ジョニーの後ろ姿だ。

もう何も言うまい。

後ろ姿まで人をバカにしてるとか…。

 

 

背中に何か、引っかける部分があり、何か説明イラストが書いている。
この部分を、拡大してみよう。

 

ひ、1人じゃ出来ないじゃん…。

 

2人いないと出来ないじゃん…。

 

 

要するに、この部分にテグスを引っかけて動かすのだ。

したがって、派手に動いている人にはなんの仕掛けもなく、ただ動いているだけ

そして、側に何気なくいる人物こそが、ジョニーの陰の支配者というわけだ。

 

 

分かりやすく図解しよう。

つまり、こういうことだ。

 

父親はがっかりした。

俺もがっかりした。

母親は、呆れていた。

 

あまりにもばかばかしくて、みんなバカみたいに笑った。

 

 

 

 

アハハハハハハハハハ…

 

 

 

 

 

 

…乾いた笑いでした。

 

 

 

この後、ジョニーに町中で会うことはなかった。

一発売り逃げというヤツらしい。

 

 

 

もちろん、我が家ではいつでもジョニーに会えるのだが、

 

 

引出から取り出してまでジョニーにあうことはなかった。

 

ってか、顔も見たくなかった。

 

 

この顔だよ?

 

 

 

思わず殴り倒したくなる笑顔だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2003年1月。

鎌倉駅前。

 

 

ヤツはいた!

 

きちんと、動き役と、陰のジョニー遣いがいる。

よみがえる、あの忌まわしき思い出。

 

 

「波乗りジョニー」がヒットしたとき、ヤツがサーフィンしてる絵が浮かんできて自己嫌悪に陥ったこと。

 

 

 

いろんな思い出が交錯する。

 

 

思わず俺は、手にしていたデジカメで撮影してしまった。

 

 

 

 

 

すると、血相を変えた動かし役の女性が、駆け寄ってきて一言。

 

 

「写真はご遠慮下さい」

 

 

 

 

お前いつからそんな大物になったんだ!

ジョニーよ…。

 

 

 

「あ、はいすいません」

俺はおとなしく引き下がったが、すでにもう撮ったあとだったのだ。

糸が写るとまずいらしいな。

 

 

やはり、屋外だと、テグスは見えない。
光の向きなんかも考えているようだ。

 

俺は、もう満足だった。

しかし、である。

ほのぼのとした雰囲気の、ジョニーを囲んだ群衆の中から、衝撃の一言が撃ち出された。

 

 

「俺は札幌でだまされたなあ」

 

 

…え? さ、札幌…?

てことは…

 

 

アンタ、今まで全国ツアーかい!?

 

納得した。

ジョニーは、もう全国規模なのだ。

だから、写真もダメなんだ。

 

もう、昔のジョニーじゃないんだ…。(んなこたぁない。 by タモリ)

 

 

 

 

まあ、久々に動いてるジョニーをみたよ。

アレをみただけで、俺は鎌倉に行ったかいがあったよ。

もう、満足。

 

「ジョニーは永久に不滅です」(んなこたぁない。 by タモリ)